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ねじの材料


ねじ(ネジ)用材料として使用されるものは主として線材、棒材です。

コイル状に巻取られた材料のうち、圧延で作られたままの状態のものを素材、という観点から線材(Wire rod)と呼び、

線材に熱処理、伸線などの加工を施してねじ用材料として使用できる状態になっているものを線(Wire

と呼んで区分しています。

 

(1)鉄鋼材料

鉄鋼は材料として次のように優れた特徴を持ち、ねじ用材料の大半を占めています。

 ・ 安価で量的に豊富であり入手が容易
 ・ 強度、靭性を兼備し、かつ冷間、熱間、切削などの加工が可能
 ・ 成分あるいは熱処理を適当に選ぶことにより、性質を広範囲に変化させることが可能

鉄鋼材料としては加工性、靭性の点から炭素量0.6%以下のものが多く使用されています。
ねじ用鋼材には鉄一炭素系をベースとした炭素鋼と、鋼に強度、焼入性などの性質を与えるためクロム、モリブデン、ニッケル、マンガンなど各種の合金元素を添加した合金鋼、耐食性を目的としたステンレス鋼があります。 また微量のボロンが焼入性を大幅に向上させることに着目して開発されたボロン鋼などもあります。

1) 炭素鋼の種類

一般構造用圧延鋼材及び機械構造用炭素鋼 冷間圧造用炭素鋼線
一般構造用圧延鋼材はSS材、機械構造用鋼はSC鋼と呼ばれており、棒鋼、バーインコイルおよび線材として製造されます。
通常棒鋼は熱間鍛造によって成形するねじ材として、また棒鋼やバーインコイルは冷間引抜きを行って切削ねじ材として使用されます。 線材は伸線を行い冷間成形用ねじ線として使用されます。
SS材は鋼材の引張強さによって3種類に区分されますが、化学成分は りん、いおう の不純元素の許容限度が決められているだけで、製鋼法についても特に規定がありません。
SC鋼は化学成分が主として炭素量によって詳細に規定されており、製鋼法もギルド鋼に指定されているので、材質は均一であるなどの品質特性を有しています。
従って使用に際してはその目的により適当な材料を選択することが必要です。特に厳しい機械的性質を要求されるねじ類の製造に対してはSC鋼を選定することが望ましいでしょう。
冷間圧造は我が国では近年急速に発展した加工方式で、現在ではねじ加工方式の主流をなしています。その線材としてSWRCHと呼ばれる冷間圧造用炭素鋼線材(JIS G 3507)及びSWCHと呼ばれる冷間圧造用炭素鋼線(JIS G 3539)の規格があり又、冷間圧造材料として重要な品質特性は、表面品質、機械的性質、脱炭層深さ、球状化組織、線径の精度など、きめ細かに規定されています。







2) 合金鋼の種類

合金鋼を使用する目的は、合金元素添加による機械的性質の向上にあります。又、これを熱処理することによって、炭素鋼で達成し得ない高強度と高靭性の両方を保証するためです。
マンガン鋼、マンガンクロム鋼(JIS G 4106) クロム鋼(JIS G 4104)
機械構造用炭素鋼よりもMn量とMnプラス0.5%程度のCrを添加した鋼。 機械構造用炭素鋼に約1%のCrを添加して焼入性を改善した鋼。
クロムモリブデン鋼(JIS G 4105) ニツケルクロム銅(JlS G 4102
焼入性が良好で、焼きもどしに対する抵抗性もよく、機械的性質も優れている。
この銅種はMoを含有することによって、いわゆる焼もどしぜい性を防いでおり、他の鋼種よりも靭性面で優れた靭性を有しています。
ニツケルクロム銅は機械構造用低合金鋼の元素で、Niは材質を強靭にするという特徴はあるが、高価であり、またこの鋼種は焼もどしぜい性が現れやすいため、今日ではあまり多くは使われていません。
ニツケルクロムモリプデシ(JlS G 4103)
ニツケルクロムモリプデン鋼は、機械構造用鋼中もっともすぐれた鋼である。ニッケル、クロム、モリプデシと三元素の添加によって焼入性ぱ他の鋼種よりも大きく、焼もどしによる軟化抵抗も大きいので、高温に焼もどしすることができます。

3) 新しいねじ用鋼材料

冷間圧造で加工成形したねじ部品を焼入れ、焼もどしを行い、所要な強度にしたねじ部品を、調質ねじ、まだは調質ボルトと呼んでいます。
最近は、これら成形後の熱処理を省略あるいは簡略化した非調質ねじ用の材料、またはねじ製造法が発展しています。
冷間圧造する場合の線 ボロン鋼
あらかじめ焼人れ焼もどをした調質線材などがあり、圧延工程で所要の強度にした線材を用い、寸法精度と外観精度を仕上げるため伸線したねじ用線を使用して、冷間成形にてねじを作る方法。製品化後の熱処理が省ける材料です。
少量で焼人性をいちじるしく向上し圧造成形性を害わないポロンに着目し、炭素含有量を少なくしたボロン鋼がポルト用材科として、摩擦接合用高力ボルトなどに使用されています。
炭素含有料は0.30%以下の鋼が用いられ、マンガンなど鋼、マンガンクロム鋼にボロンを添加した材料。圧延のままかあるいはかんたんな焼なましを行った線材を伸線して使用します

4) ステンレス鋼

普通ステンレス鋼と称するものは、鋼の表面に不動態化被履が形成して不錆性を保つ鋼のことをいい、主成分としてCrを含有しています。耐食基礎理論からCr含有量12%以上が必要です。またステンレス鋼は、特殊なものを除けば、高温での強度が大きく、耐酸化性が優れていることから耐熱鋼としても使用されます。
ステツレス鋼は、含有されている主成分から大別すると、下記のように分類されるます。
   

系 統

主要成分

種 類

 

ステンレス鋼 マルテンサイト系 13%Cr SUS410,SUS431,SUS440C
フェライト系 18%Cr SUS430,SUS434
オーステナイト系 18%Cr
-8%Ni
US304,SUS305,SUS305J1,SUS384
SUS385,SUS316,SUS XM-7
マルテンサイト系ステンレス鋼 フェライト系ステンレス鋼
マルテンサイト系ステンレス鋼は、高温に加熱後、急冷することによって、マルテンサイト変態により硬化します。マルテンサイトは硬度が高くてもろいので適当な調質熱処理を行ない、靭性を回復させ、良好な機械的性質を得て構造用鋼として使用される場合が多い。耐食性はオーステナイト系ステンレス鋼に比べて劣るりますが、強度が高く、かつ耐摩耗性に優れています。 フェライト系ステシレス鋼は、焼なまし状態でフェライト組織を示し、焼人れによって硬化しない。また冷間加工において多少の硬化はするが、オーステナイト系ステンレス鋼に比べて硬化は小さい。
フェライト系は、ステンレス鋼の中で圧造性は優れている分類に属し、苛酷な冷間成形加工にも耐え、耐食性はマルテンサイト系ステンレス鋼より優れています。
オーステナイト系ステンレス鋼
この系続の鋼種は焼なまし状態で完全なオーステナイト組織を示し、焼人れによって硬化はしません。オーステナイト系ステンレス鋼は冷間加工によっていちじるしく加工硬化を生じ、冷間圧造成形加工が他の系統のステンレス鋼に比べてむずかしい。
代表鋼種の特徴および用途
SUS410 13Cr鋼の代表的な鋼種で、ねじ成形加工後、ねじ特性を具備させるため調質熱処理を行 なう。
SUS430
18Cr系の代表的な鋼種で、圧造性は優れていますが、冷間加工硬化は小さい。したがっ て、タッピングねじのようにねじ山強度、締付トルクを必要とするねじには適しません
SUS304

オーステナイト系ステンレス鋼の代表的な鋼種である。当鋼種ぱ冷間加工を与えると硬化します。このように冷間加工硬化性がいちじるしい材料をねじ成形加工した場合、成形時の変形抵抗が大きく、工具類の折損、あるいはねじ頭部に圧造割れを生じます。したがってかんたんな圧造にしか使用できません。
SUS305
SUS304の圧造性改良型である。冷間加工硬化性の改善を図るためにSUS304にNiを
約3%多く添加したものです。耐食性もNi添加によって多少向上しています。
SUS316
当鋼種は本来耐食性材料として開発されたものです。耐食性元素として、Cr、Ni以外にMoを2〜3%添加しており、組織的にも安定したオーステナイト組織です。したがって冷間加工性が小さいために強度を必要とする小ねじには適用されません。
SUS305J1
SUS305よりも冷間圧造性の向上を目的として開発されたものです。ナペ頭サラ頭十字穴付きねじのように、苛酷な加工に耐え、切削性も比較的良好です。
SUSXM7
18%Cr−8%Niに3%Cuを添加した材料です。冷間庄造性に優れているため、ナベ、トラス頭十字穴付き小ねじ等の苛酷な圧造にも耐えるとともに、305J1より圧造時の工具寿命の点でも優れています。

 

(2)非鉄材料

1) 銅および銅合金

銅は耐食性、電気伝導性、熱伝導性、展延性などがきわめてよく、非常に優れた性質をもっているので、そのままでも広い範囲に利用されていますが、他の金属を合せた銅合金はさらに優れた性質をもつようになり、多種の用途に用いられています。一般に使用される銅合金は銅と亜鉛の合金の黄銅、銅と錫の合金に少量のりんを加えたりん青銅、銅・ニッケル・亜鉛の合金として洋白、さらに銅とアルミニウムを主体とした特殊アルミニウム青銅があります。また非常に良好な切育削加工性をする鉛を添加した銅合金(快削黄銅、快削りん青銅、快削洋白など)があります。さらに銅および銅合金は色沢が美しく、めっき性に優れており、また磁性をおびないこと、はんだ付が容易なことなど大きな特性があります。
責銅
銅は原料の電気銅を溶解して製造し、その溶解方法により分けられます。その代表的なものは無酸素銅、タフピッチ銅およびりん脱酸銅であります。無酸素銅は真空中または無酸化ガズ中で溶解製造したもので、タフビッチ銅は銅中に酸素を多少残した精製銅です。りん脱酸銅は溶解中に吸収した酸素をりんを用いて除去したものです。電気伝導性は不純物がもっとも少ない無酸素銅がもっとも良好です。タフピッチ銅は銅中に合まれる酸素のため、水素ぜい化を起すので、還元性のガス中で高温に加熱したり、溶接したりする場合は適しません。 銅と亜鉛の合金で一般にしんちゅうといわれており、銅分が97〜78%のものは色沢の点から丹銅といわれています。黄銅は銅と亜鉛の合有量により色沢が変化します。機械的性質は銅分が70%になるまでは引張強さ、硬さが増大するとともに伸ぴも増してゆき、銅分が60%になると引張強さ、硬さはさらに急激に増しますが伸びは小さくなります。この範囲では展延性が良好なので容易に加工され、種々の用途に用いられます。しかし銅分が57%以下になると硬〈てもろくなるため、あまり使用されていません。尚、これらに第3元素を加え、さらに特有な性賀をもった合金がもあります。
りん青銅,特殊アルミニウム青銅 洋白
りん青鋸は銅に錫と少量のりんを加えた合金で、機械的な強度が大きく、耐食性が大でしかも磁性がなく、耐摩耗性が優れています。これらの性能は錫の量が多いほどよくなりますが、成形性が悪くなる特殊アルミニウム青銅は銅とアルミニウムの合金に機械的性質をより向上ずるため、鉄、マシガン、二ッケルを添加したもので、強度が高く耐食性、耐摩耗性が優れており、また高温における酸化に対して強い。 洋白は銀白色の美しい色をもち、耐食性が優れており、加工しやすい。




2) アルミニウム合金

合金系によってかなりの強さのものが得られます。合金の強さを得るのに加工硬化を利用する方法と熱処理を利用する方法とがあります。アルミニウムは、低温におけるぜい性の心配が一般に鉄鋼材より少ないので、低温に使用される構造材の接合には利点が多いが、締付力の時間的変化には注意すべきです。軽いことはすぺての構造材にとって倒外がありますが好ましい性質てあり、鉄銅あるいはしんちゅうのねじに比べ同一寸法ては1/3程度の重量です。

一般にアルミニウムは耐食性は良好とされている。しかし強さのすぐれたものは、表面処理(一般にはクロム酸浴の陽極皮膜処理〉をして用いることが望ましい。非磁性金属であるのでとくに磁性が問題となるような部分への利用、また熱膨脹係数が鉄鋼の2倍もあるので熱変化の大きい部分での異種金属との接合には避けた方がいいでしょう。